オールドのB2やB3のコートを剥いで、
生のブランクを見る回数が増えてくると、
この当時のルアー作りが何となく見えてきます。
“アタリ”とは何なのか…ということも
ちょっと前に書きましたが、
果たしてどれくらいの割合で“アタリ”が存在するんでしょうか。
膨大な量のサンプルが無いと、それは分からないのですが、
私が思うにかなり少ない(少なかった)のではないでしょうか。
何でかというと、まずまともに泳ぐものが少ないのと、
現代基準でいくと、全体的に精度が悪いからです。
すごく分かりやすいのはリップの取り付け精度が悪くて、
真っすぐに付いていないパターン。
そして、ラインアイの位置のバラツキ、
ウエイトの挿入位置のズレがあります。
でも、私が思う最大かつ致命的な欠陥は
“ボディーの歪み”です。
私の元にやってくるオールドのB2やB3は、
自分で手に入れたものや、譲っていただいたもの、
リペイント依頼品などですが、
そのほとんどに調整のあとがあります。
ラインアイのトゥルーチューンはもちろん、
リップの付け直し、リペイントや
強度アップを狙ったと思われる追加コーティングなどなど、
ユーザーがなんとか使い物になるように、または
自分が使いやすいように調整した痕跡です。
でも、それらのほとんどがまともに動かない…。
だからこそ、巡り巡って私のもとにやってきたのかもしれませんが…(^^;)
一時期、本場の名だたるトーナメンターが
こぞって探したというオールドバグリーですが、
結構大変だったと思います。
調整して使いものになる確率ってどれくらいだったんでしょうね?
無駄な出費がかなりあったと想像されます。
手に入れたオールドバグリーのコートを剥がして、
ブランクからもう一度仕上げる作業してた人が
どれくらい居たかわかりませんが、
そうでもしないと、ボディーの歪みは矯正できないので、
必然的に“ハズレ”の個体が手元に増えていくことになります。
バルサ地にすると、すごく良くわかるのですが、
とにかくボディー形状がバラバラです。
間違いなく機械で回しながら削っていたと思います。
これなんか回転でできる溝が残ってますし。
70年代の機械の精度はやっぱりそれなりだったと思います。
均一だったら逆にすごいです。
今よりさらにレジェンドでスペシャルなルアーになっていたことでしょう。
年代によってボディー形状が少し違うのかもしれませんが、
同じ年代だからといって、均一だったかというと
そうではないと思われます。
ボディーの端々を見ると、何となく精度が見えてくるので…。
ぱっと見でわかるのが、
テールの太さです。
全然違います。
でもこれは、実はそれほど深刻ではありません。
深刻なのが、
左右のズレです。
写真は矯正したあとなので、
ほぼ、左右対称ですが、
かなりの確率でどちらかが盛り上がっていて、
それが、アクションの質を低下させています。
いろんな原因があったと思います。
機械の精度の問題、オペレーターの練度の問題、
木材の問題などなどです。
木材の問題って何?
と思うかもしれませんが、
木材は均一な素材ではなくて、
ところどころに密度の変化があることが普通で、
ひとつのブランクの中にそうした変化があると、
削りムラができやすくなります。
比重の軽いソフトバルサを使っていたと思われる
このシリーズにあって、一番典型的なのが、
ショルダー部分に硬い部分(密度が高い)がある場合です。
当然、その硬い部分は削りにくいので、
盛り上がりやすいのです。
片方のショルダーが盛り上がった
歪みのあるボディーの出来上がりです。
こうしたボディーは左右(主に上部の)の水の流れが均一でなくなるのと、
浮力の偏りで、質の高いアクションの妨げになります。
アクションは反復運動でもあるので、
それの乱れにも繋がって、良いことはひとつもありません。
この写真のブランクは向かって左側に
少し赤みのあるところがあるんですが、
そこだけ硬くなってます。
硬いところは、他よりも重いので、
それも良い影響はありませんが、
形状の歪みほど深刻ではありません。
なので、矯正さえすれば、きれいに泳ぐようになります。
手持ちのオールドバグリーで、
リップに問題がなくて、ウエイト位置のズレもなく、
ラインアイの調整でもダメ場合、
きれいに泳がない原因は多分ボディーの歪みです。
また、ラインアイを下に下げることで、
アクションは強くなり、安定傾向になります。
なので、私がやるリペイントは、
ラインアイはカットして、別途、後付けします。
ちょっと乱暴ですが、ラインアイを「抜く」のは
ほぼ不可能です。(何度もトライしました…)
なので、見えてるところをカットします。
そして、少し下に新たなアイを刺します。
また、無理矢理下に曲げたラインアイは、
スナップが絡むことが多いので、それの改善にもなります。
リップの切り口はバルサで完全に埋めて、
ボディーを矯正し、必要最低限の下地とコートで
仕上げます。
(塗装前の下地が完成したもの)
リップは劣化してるので、新たにポリカーボネートで
切り出して適正な位置に正確に取り付けます。
こうすることで、実釣で不満無く使える
オールドバグリーが出来上がります。
手持ちのハズレオールドバグリーを
なんとかアタリに変えたいと思う方で、
ある程度の塗装環境がある人は、
試してみても良いかもしれません。
コート剥ぎは、以前紹介したシンナー風呂で
簡単にできますから。
あと、バルサの比重ですが、
かなりの確率で問題ない高浮力を持ってますので、
それは徹底していたんでしょうね。
ブルブルと強いウォブロールで泳ぐ
オールドB2/B3はきっと戦力になってくれると思います(^^)
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オールドバグリー“ハズレ”の正体
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